漂泊の兵(つわもの)

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 ところが、一人生還した僕に対して、小隊長は「何で、死んでこなかった!生き恥をさらすようなまねをしおって!」と叱責するんだなァ。生還したことを誰も喜んでくれないばかりか、ビンタを百発くらい喰らった挙句、「死んでこい!」だもんねえ。あの時は、本当にこの人達は頭がおかしいと思ったよ。米軍よりもマラリアよりも、味方のはずの日本軍が一番怖ろしいと思った。  でもねえ、そんな地獄の様な日々の中でも、僕を助けてくれた人もいたんだよ。  僕が傷病兵として悶え苦しんでいた時、何かにつけて、面倒を見てくれた人がいた。  通常の食事以外にも、どこからか果物とか調達してきてくれて、こっそり僕にくれたりした。毎日のように僕の状態を見に来てくれて、「大丈夫か?欲しいものは無いか?」と声をかけてくれた。あんなに物の無かった戦場で、できる限りのことをしてくれたよ。     
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