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ところがねえ、そう言いながらも、その人の表情は何となく清々しい感じがするんだ。負い目を負ったような雰囲気が全然無いんだなあ。何故だろうと思ってたらね、僕の心を見透かしたように、僕の顔をじっと見つめた。そして「お前には話しておいてやる」と言って、こう続けたんだ。
「実はこの別行動は、あらかじめ部隊全員の合意で決まっていたことなのだ。俺達の上官は、明らかに勝ち目のない戦闘で、兵を無駄死にさせることは何としても避けたかったのだ。いよいよ明日にも敵襲が迫っているという情報が入ってきた時、上官は俺達全員を集めて、死ぬのは自分一人で良いから、お前達は全員離脱せよ、と伝えた。
「最初は勿論皆反対した。一緒に死なせてくださいと涙ながらに訴えた。だが、そんな俺達を上官はこう諭した。
『お前達には、犬死によりも、もっと大事な任務があるのだ。銃後に戻り、戦争を知らぬ者たちに、俺の無念、仲間の無念、そして、戦争の虚しさ、惨たらしさをしっかりと伝えよ。そうすることによって、十年後、百年後の戦争を回避するのだ』
静かにそう諭されて、誰も反対はできなかった。
「だが、どうしても上官の傍で散りたいと言ってきかぬ者もいて、結局、部隊をほぼ半分ずつに分けることになった。最後まで戦って散る者と別行動して離脱する者。皆が涙ながらに合意した決定だったのだ。
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