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序花~花の記憶~
君が遺してくれた月花の歌は叫ぶ
花と詩を焼よ、と
誰よりも、険しく美しい在り方を
あの日、君がくれた傷も 私がもらった 愛も全て
あの月夜の光の方へ、燃やせばいい
君のことを忘れられないまま、長い年月だけが虚しく過ぎていった。
あの時、君は何故 あんなことをしたのか。
結局、君が何をしたかったのか 本当は私に何を伝えたかったのか。
今も、確かなことだといえるものは、全て
花と詩と共に燃えてしまった君自身の中。
通勤電車に揺らされながら、手すりを頼りなさげに掴む女性は、鞄に忍ばせている音楽プレーヤーのスイッチを力強く押した。
真紅の花と炎を彷彿させる色を映すイヤホン越しに響いてくる、 あの日から今もずっと忘れられない『月と花の歌』。
甘くほろ苦い音色を共に響いてくる詩と共に、決して忘れることのできない過去の記憶も、女性の耳朶を通って心へ流れ始めた。
あの夜に咲いた月と花
そして、今も鮮明に思い出せる、彼の笑顔。
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