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第一花~月夜と野に咲く花束~
それは、梅雨明けの満月が照る、しめっぽくも美しい初夏の月夜にて。
鬱蒼とした深い森の中で、たった一人きりで、美咲は歩みだしていた。
安らかな終わりへ向かうために。
「(もう、ここで終わりにしちゃおっか。もう……
死のうか)」
私立月花高校に通う二年生、花宮 美咲は、孤独だった。
まるで、美しく咲き誇る花々の下に埋もれ、誰の目にも留まらないまま、ただ朽ちていく花びらのように。
春を謳う花のように美しく、可憐に咲き誇るクラスの女子達の中でも、美咲は地味で影の薄い存在だった。
受験に失敗した末に、滑り止めの滑り止めで受かった月花高校。そこには、美咲の友達も居場所も、何もない。
影に咲く雑草のように地味で暗い美咲のことを気に留める者は、誰もいなかった。
しかし、高校一年の夏休み明けに、美咲にとっても寂しくも平和だった日常はやがて綻びはじめた。
それ以降は、ひたすら、静かなる地獄の日々が、だんだんと美咲の何かを確実に、壊していった。
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