第一花~月夜と野に咲く花束~

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 第一、山田にはあげていけばきりがないほどに、黒い噂もごろごろと転がっていた。  「それはそうと、花宮こそ、何でこんな夜更けに外に出てんの?」  「べ、別に……。ちょっと買うものがあったから、ついでに寄っただけよ」  「こんな森の奥深くに?」  「っ……どこにいこうと、私の勝手でしょ。ただ……一人きりに、なりたかっただけ」  「ふーん。そっか。なら、安心した」  「は?」  「まさか、こんな夜更けにこんな場所で、花宮に会えるとは思わなかったからさ。  もしかして、俺と同じこと(・・・・)……花宮も考えてくれたんかなーって」  同じ、という言葉を山田が呟いた瞬間、美咲は不意に心臓が一瞬高鳴った。  しかし、胸の奥を打ち付けられたようなこの痛みは一体何なのか、美咲にはよくわからなかった。  自分が(ここ)に何しに来たのかを、悟られたのではないか、と一瞬動揺したからか。 それとも。  いや、まさか。いつもヘラヘラ笑ってばかりの、この男に限って。  一方、美咲の苦しい言い訳を耳にしても、相変わらず普段通りの飄々(ひょうひょう)とした笑みを崩さない山田に、美咲は安堵した。  「同じって……月が、綺麗だからとか?」  「あれ? 花宮大胆だなー」  「はぁ?」     
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