不治の病

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 僕は断る理由がなかったので、彼女の願いを聞き入れた。  二人で担当医に事情を話すと、二日後に脳の移植手術が行われた。  手術の結果は成功。僕の脳は彼女の頭の中に入り、癌に侵された僕の体は抜け殻となって火葬された。  死ぬ前に、好きな彼女のために何かをできたということが本当に嬉しい。ただ死を待つことしかできなかった僕が、彼女の望みを叶えることができて、悔いのない死に方ができたと思う。  その後僕の意識はどうなったかと言うと、  「君は僕なんかになれて満足なの?」  ──はい、本当にありがとうございます。私は生きてきた中で一番嬉しい気持ちになったと思います。  脳内で彼女の声が響いた気がした。  
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