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( ずっと、魔法と無縁な国でよかったのにな… )
そう思うのも何度目だろう。目の前に逃れられない現実が待っているかと思うと、瞼を開けるのも億劫になる。
と、草木の音に混じり、遠くから自分の名を呼ぶ声がする。
「ユーリー、おーい…どこだ~?」
自分の名を略称で呼ぶのは数人だけで、その声の主にすぐ見当がついた。あえて返事はしない。そのうちここにたどり着くだろう。
重い瞼を開けて、ぼんやりと木漏れ日が揺れるのを眺めていると予想通り視界に影が現れた。
青々とした大樹の葉と同じ色の瞳に、見慣れた顔が映った。
「よぉ、ユーリ、探したぜ…ここにいたのかよ」
「まぁね…」
そう返すとユリウスは顔を背けて、さっきまでしていたように本を顔の上に乗せた。バーナードはユリウスのそっけないその態度に肩をすくめた。
「....ったく、おサボリが許されるんだからいいよなー、お・う・じ・さ・ま!」
ユーリをからかう様に彼がその単語を強調する。
「バーナー!その呼び方やめろっていってるだろ!』
飛び起きて相手を睨む。
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