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ユリウスはそう呼ばれるのが嫌いだった。その言葉が、忘れていたい嫌な現実を思い出させる。
身分故の付加価値。大きな期対と、その奥にある大きな落胆。自分の決められた立場。その立場に似つかわしくない自分。ユリウスにとってそれは、現在の自分を否定する言葉以外の何物でもないのだ。
「お、起きた、起きた。サボってんのバレたらあいつらに怒られるぞー」
「サボってないよ!勉強してたんだ!」
「へぇー、どれどれー」
バーナーは悪戯な笑みを浮かべながらユーリの手から本を奪う。
「…ローゼンベルガー王国の歴史と魔法……げっ、マジで勉強してたのかよ」
タイトルを見たバーナーは、心底嫌そうにそれをユーリの手元に向かって放り投げた。
本を読んで解決出来るなら、どんなに楽だろう。ユーリは深いため息をついた。
「…先生に頼まれたんだ。クラス委員として次の成績をどうにかして欲しいって」
「どうにかっつってもなー…筆記はまぁ、どうにかなってもさ、魔法がなー」
「.......だよね…」
「魔法が使えたら、お前もオレらもこんなとこいねーって話だよな!」
魔法が使えて当たり前の世界。
そんな世界なのに魔法が使えない自分たちはどうすればいいのだろうかと、嫌になるほど考えた。
答えはずっと見つからないままだ。
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