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朝から彼女に会うと、少しだけ元気を分けて貰った気分になる。
「おはよう。元気だね」
「もちろん。夏は好きだからね」
でしょうねぇとしか言いようがない。
「もうすぐ夏休みだね、水本君」
「ああ、そうだね」
「何か予定はあるの?」
「いやー、無いなぁ」
「……クラスの誰かと遊びに行くとか?」
「無いよ」
「そうなんだ……ふーん」
顎に人差し指を当て、彼女は軽く青空を見上げた。
「えーと、先行くね」
「あ、うん」
僕の歩みが遅すぎたのか、知り合いの姿でもあったか。ちょっと話す程度の中だし、特に気にはしないけど。
彼女は小走りに遠ざかって行った。
その後ろ姿を見ながらつくづく思う。気持ちの良い子だなぁと。
根っからのネガティブ思考である僕は、彼女のような人間に憧れるものだ。
彼女をモデルにした主人公で小説を書こう。
当時、文芸部に所属していた僕は、夏休みに小説を一本書くことを目標に設定していた。
その題材を探していたのだが、ついに見つけたというわけだ。
もちろん、このプロジェクトは秘密中の秘密だ。
相沢さん本人に知られたら、きっと怒るに決まっているから。
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