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ある日、いつものように反射を利用して彼女を見ていたところ、不意にその姿が消えた。
「ねえ」
その直後、後頭部側から声をかけてきたのはもちろん相沢さんだ。
張りのあるその声を浴びせられた時、僕は冷水でもぶっかけられたような気分になった。
親に隠れて、コッソリ深夜の桃色番組を見ていたら、突如親が部屋に入ってきたときのような感じだろうか。
「窓の外にさ、なんか面白いものあるの?」
俺が振り向くより早く、相沢さんはどうやら身をかがめ、俺の顔の横に自分の顔を並べてきた。
漂ってきた良い香りに、思わずうっとりとしてしまう。
「猫でもいた?」
「え、あ、いや……」
「ほんとだ、いるねぇ」
そう言いながら、彼女が指先に持っていた何かを僕の手に押し付けてきた。
他のクラスメイトには見えない角度でだ。
「いっつも窓の外見てるからさ、気になってたんだよね」
僕が受け取ったのを確認すると、彼女は身を起こした。
「そっか、猫見てたんだねぇ。分かるよ、可愛いもんね。でも、見過ぎには注意しなきゃね」
「……だ、だよねぇ」
「あー、スッキリした」
僕の肩をぽんと一つ叩き、彼女はそのまままた遠ざかっていった。
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