相沢さんと僕

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 その直後、僕が教室を飛び出してトイレに駆け込んだのは言うまでもないだろう。  様々な揶揄を恐れず、僕は個室に飛び込み、手の中に握りしめていたそれの正体を確かめた。  折りたたんだ紙切れだ。  ノートの切れ端?  開いてみると、そこには実に大振りな走り書きがあった。 「昼休み中庭」  呼び出しって事だよなぁ。  しくじった、という思いが十分の一。  残り十分の九で胸が高鳴っていた。  例え罵声を浴びせられるにしても、彼女からなら楽しみだ。  そう思っている自分に気付き、軽く死にたくなったりもしたが、昼休みまでは生きることにして、何食わぬ顔で教室に戻った。  自分の席に戻り際、ちらりと相沢さんを見ると、彼女も僕を見てにんまりしていた。
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