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プロローグ 昔々のおとぎ話
それは昔々のおとぎ話・・・・・・。
広い森の外れに小さな都がありました。
都には綺麗な城がそびえたち、人々は森の恩恵を受けて穏やかに暮らしていました。
しかし、ある日のことでした。
王妃様が突然に亡くなってしまいます。それ以来、王様は城に閉じこもって涙を流すばかり。その悲しみは都を越えて森までも覆い尽くします。すべてを黒く、闇へと変えてしまいました。
しばらくすると、森から一人の魔女が城にやってきました。
王様は「どうか、王妃を生き返らせてほしい」と、森の魔女に願いました。
けれども、森の魔女にも死んだ人を蘇らせることはできません。
せめて、悲しみを和らげてあげようと、代わりにと或る魔法をかけました。
すると、はるか上空の満月から無数の黄金の光が・・・・・・。
ゆっくりゆっくりと降ってきます。
よく見れば、まるでクラゲに似た生き物でした。黄金のクラゲたちは空をゆっくり漂いながら、森に光を照らしてくれます。目映い光に彩られた森を見て、王様は心を慰められました。
ところが、黄金クラゲが森にいる間、都はずっと冷たく冬のまま。
このままにしておけないと考えた森の魔女は「春を呼ぶためには、黄金のクラゲを月に返すしかありません」と王様に訴えました。
それでも王様は黄金の光を手放したくはありません。
「決してクラゲは月には返さない」と駄々をこねるばかり。
お陰で、何時になっても都には春が来ません。
春が待ち遠しくてならない人々は、とうとう辛抱ならずに都から離れていきます。
寂れていく都の惨状に責任を感じた王様は森の魔女にすがりつきました。
森の魔女は次のように提案しました。
『冬になれば、再び月から黄金クラゲを呼んで、森を照らしてあげましょう。ただし、三月の満月の晩になったら月へと返しますよ』
「わかった」と王様は約束しました。
こうして森の魔女は再び魔法をかけます。すると、無数の黄金クラゲたちは魔女に誘われる様にして、月へと返っていったのでした。
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