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ユリウスさんの手を取って俺達は歩き出したのだが『なんで俺たち手を繋いで歩いてるんだ…?』と、俺はふと我に返った。
「あのぉ、手…放して貰っていいですか?」
え?と一瞬首を傾げたユリウスだったのだが、その繋がれた手を見て、彼もはっと我に返ったように手を放した。
「ごめん、ついクセで…」
「クセ…?」
人と手を繋いで歩くクセって一体…
「あはは、私には君と同じくらいの歳の弟妹がいてね、出掛ける時はいつもこうだからついうっかり」
「弟妹…」
しかも自分と同じくらいの歳というのは聞き捨てならない。
まさか、自分の父親は自分の妻が妊娠している傍らで俺の母親と不倫していたと、そういう事か?
黙ってしまった俺に更に「ごめんね」と謝って、彼は「こっちだよ」と先を行ってしまう。
どうにも心の中はもやもやするのだが、俺は何も言わずに彼の背を追った。
「それにしても、毎回思うけどお祭りの時のイリヤの活気は凄いよねぇ、ノエル君はこのお祭りは初めて?」
「ルーンから出たのは今回が初めてです」
「あぁ、そうなんだね。その歳で一人旅、ノエル君は勇気があるなぁ」
自分がその歳の頃、自分は何をしてたっけ?とユリウスは首を傾げた。
「このお祭りって一体どんなお祭りなんですか?」
「え?知らないの?」
「興味なかったんで」
「それじゃあ本当にタイミングが悪かったんだね。いや、逆に考えればタイミング良かったのかな?このお祭りの期間はほとんどの騎士団員がイリヤに帰ってくるからね。君のお父さんが本当に騎士団員だって言うのなら、タイミングは良かったのかも」
ユリウスの言葉はまだどこか人事で、俺はどうにも憮然とする。
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