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「もう、なんでもいいから早くやろうよ」
険しい顔付きの少年達とは対照的にウィルはわくわく顔で、ツキノとカイトを見やった。
黒髪の少年ツキノは面倒くさそうな顔をしているし、金髪のカイトはにこにこしているのだが中身は底知れない、なんだろうこの人達…正直逃げたい…
「ふむ、君達はウィル坊も含めて僕達が気に入らないようだねぇ?だったら、僕達4人対君達全員って事でどう?」
カイトの提案にその場に居た10人近くの少年達がまた険しい表情を見せたのだが、ツキノもウィルも何でもいいという顔付きで、完全に巻き込まれた俺はやはりまた少年達に睨まれてしまう。
これ嫌だって言ったら抜けさせてくれるのかなぁ…きっと無理だよねぇ…
ちらりとユリウスの方を見やったら、ユリウスはまた知人にでも会ったのだろう、大柄な男性と何か話しをしていて、どうやらこちらの険悪な空気には気付いてない様子だ。
最後の頼みの綱にまで見放された気分で、俺が視線を少年達に戻すと彼等の中で一番体格のいい少年が「分かった」とひとつ頷いた。
「ここで負けても後で文句は聞かねぇからな」
「別に勝っても負けても何か変わるわけでなし…」
ツキノはつまらなそうにそう呟く。
「何言ってんのツキノ、ここで勝っておけば来年騎士団に入隊した時、待遇良くなるの知ってるだろ?僕達の輝かしい騎士団員生活の為にもここは勝っておくが吉だよ」
「カイ兄、来年騎士団入るんだ!てっきりカイ兄はおじさんの跡継いで研究職にでも就くのかと思ってたよ」
カイトの言葉に反応して今度はウィルがそんな事を言った。
研究職?カイトの親は何かを研究をしている人なのか?
「僕の頭脳を持ってすれば、その選択も無くはないけど、でも僕は研究者にはならないよ。それは何故だか分かるかい?」
「え…そんなの分かるわけないじゃん」
「ふふふ、よく考えれば簡単に分かる事さ。なんせ研究者は地味だからねっ、僕がそんな地味な仕事で収まっていられると思う?」
両手を広げて言い切った彼のその大仰な身振り手振りに、確かにこの人地味な仕事には向かなさそう…と納得せざるを得ない。
あぁ…なんか金髪が相まって後光でも射しているようだよ…
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