プロローグ

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「これでもちゃんと騎士団員だよ、そんな疑うような目、向けないで。何なら身分証見せるけど?」 「別に嘘でも何でもいいけどさ、俺は道に迷ってる、あんたも道に迷ってる。ついでに姉も探さないといけないんだろう?だったらここは協力するべきかもな」 「君、若いのにしっかりしてるねぇ」 その彼の話し方にもどうにも力が抜けた。 見た目だけなら格好よくも見えるのに、何なんだろう庇護欲をそそられる。 「で、デルクマンさんはどこに行くの?」 「ユリでいいよ、皆そう呼ぶし。それにこの姓はこの街ではちょっと有名だから、目立ちたくない」 「そうなんですか?」 「君は知らないんだね。でもその方が助かるかな」 「えっと『ユリさん』じゃ女の人みたいだし、それじゃユリウスさんで」 「呼び捨てでもいいのに、君、生真面目だねぇ…うん、でもそれでいいや。私の行き先は第一騎士団の詰所、たぶん姉もそこに向かってるはずだよ」 「お姉さんも騎士団員?」 「違うけど、そこなら知り合いが何人かいるから、頼るならたぶんそこかな」 彼はまたへにょっと人のいい笑みを浮かべた。 「じゃあ、まずはそこを目指しましょう」 「いいの?君の行き先は?それに君の名前まだ聞いてない」 「俺の名前はノエル、ノエル・カーティス」 「ノエル君か。で、行き先は?」 「決めてない。俺は親父を捜しに来た。まだ、手がかりは何もない」 ユリウスは少し驚いたような表情を見せる。 「何もないの?行き先も決めてない?お父さんがイリヤにいるのは間違いないのかな?それって結構無謀な試みだと思うけど、大丈夫?」 「これだけ人がいたって、赤髪は珍しいんだろ」 「まぁ、それはね。それでも一人や二人じゃないだろうし、この人の数だよ?手がかりもなしにどうやって探し出すつもり?」 「手がかかりが全く無い訳じゃない、たぶん俺の親父もあんたと同じ騎士団員のはずだから」 「そうなんだ?」 「確実な根拠じゃないけど、人の噂でそう聞いた。13年前カルネ領ルーンにいた騎士団員の中で赤髪の人って言ったら、結構絞り込めると思うけど?」 「13年前?ルーン?君まだ13なの?」 「正しく言えば12歳と6ヶ月です」 ユリウスがまた驚いたような表情を見せる。
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