流れは容赦なく人を巻き込む

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「そうか」と頷いて男はその場にあった椅子に腰掛けるように促した。 「君の名前は?」 「ノエルです。ノエル・カーティス」 瞬間、その場にいた者達の視線が一気に俺に集中した。 え?え?何?! 「カーティス?まさかと思うけど、コリー・カーティスさんの知り合い?」 「あ、コリーは祖父です」 ざわっと空気が揺れて、更に皆の視線がこちらに集中した。 「コリー元副団長のお孫さん?」 「祖父は副団長だったんですか?騎士団に入っていたというのは聞いた事がありますけど、役職までは…」 「お母さんの名前はメリッサさん?」 「あ!そうです!」 どうやら彼等の知る副団長というのは本当に自分の祖父だったらしい、そんな話しは聞いた事はなかったのだけど意外と立場は上だったのだな、と驚きを隠せない。 「え…でも君、その赤髪…お父さんは?」 「分かりません。教えてもらってないので。自分は父を探しに来たんです、ユリウスさんはそれを手伝ってくれる事になっていて」 「そうなんだ…でも、俺たち君の事は知らないんだけど、見た目通りの年齢なら知らないはずないんだけどな…」 「俺、12歳です」 「12!?見えない!」 「いつも言われます。母は普通だし、祖父もそこまで大きくはないので、この体格は父譲りなんじゃないかと思ってます」 「あぁ…」と彼等はひとしきり頷いた。 「あなた達は俺の父親が誰だか知りませんか?」 「うぅ~ん、俺は心当たりないかな。皆は?」 男達は一様に首を横に振った。 「こんな赤髪の人間、ルーンにはいないんです。何か少しでも心当たりはありませんか?」 「あの当時赤髪って言ったら…」 言葉を濁して、彼等は何故か視線を彷徨わせる。 「まさかな?」 「いや、それはない、それはないだろ…」 囁かれるひそひそとした男達の囁き声。 「何か知ってるなら教えてください!」 「うぅ~ん、坊はなんて?」 「別段何も…」 「じゃあ、やっぱり違うだろ?」と男達は瞳を見合わせるように囁き交わした。
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