流れは容赦なく人を巻き込む

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「ところで坊はどこへ?君はなんで一人でここに?」 「なんか人攫いがどうとかで、ウィルのお父さんを手伝うって行ってしまいました。俺はここで待っていて欲しいって言われたんで、ここに来ました」 「ウィルのお父さん?第3騎士団のアイン団長?」 「はい」 「おかしいな、今回の祭りの警護は第5騎士団のはずなのに、なんでアイン団長に声がかかったんだろう?」 「なんか攫われたのがウィルの従姉妹でローズ・マイラーって人知ってます?その人だったから…」 「ローズって、マイラー様の!?」 男達はまた目を大きく見開いた。 「え?彼女、今イリヤに来てるのか?」 「はい、そうみたいですね」 「あぁぁぁあぁ、それは大事だ、これはマズイ」 男達のうろたえようは凄まじい、何なんだろう…ローズさんって有名人? ルーンの町では普通に近所の美人なお姉さんなだけなのに。 「その情報知ってる人は?外部に漏れてない?」 「え?さぁ?なんかマイラー家?も大慌てとかウィルのお父さんは言ってましたけど」 「そりゃそうだろ!慌てるに決まってる!」 「マイラー家って、そんなに有名なんですか?」 「ファルス一の大貴族だよっ!マイラー家が動けば国も動く位の大貴族!」 男の言葉に俺は言葉を失った、確かに田舎に埋もれているのは惜しい美人だけども、ここまで有名人だとは思っていなかった。 しかも貴族は貴族でも大貴族…なんで、ルーンみたいな田舎で庶民の暮らしをしてるのかさっぱり分からない。 「これはもしかしたら増援も必要になるかもしれないな、とりあえず情報収集!第3騎士団と第5騎士団に様子聞いてきて、大至急!」 男の言葉に弾かれるように数人の男達がバラバラと詰所を飛び出して行く。 あれ…なんか大事になった?俺、なんかマズイ事言った? 「私の名前はキース・グレンジャー。ここ第一騎士団の副団長だ。とりあえず、もう少し詳しい話を聞かせてもらおうか?ノエル君」 男は厳しい顔で腕を組んでこちらを見やるのだが、俺は何が何やら分からずに途方に暮れた。
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