動き出す過去の亡霊

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灯りに照らされ顔を上げた人物、知ってる人間である訳ないと思うのが普通なのだが、その上げた顔に俺は見覚えがあった。 「えっと、何してるんですか?カイト君?」 そこに居たのは数刻前自分達の前から駆けて行った金髪のカイトで、俺がその名前を呼ぶと、彼は不審気な表情で「君…誰だっけ?」と首を傾げた。 「えっと、ノエルです。ノエル・カーティス。さっきウィルと一緒にいた…」 「あぁ、思い出した。でも、なんで君はここへ来たの?」 「ちょっと色々あって、ここで待っててと人に言われたので」 「ふぅん」とカイトは興味もなさそうに頷いた。 「えっと、カイト君はなんでここに?」 「カイトでいいよ、君、体は大きいけど歳もそう変わらないんだろう?」 カイトの方が自分より幾つか年上な事が分かっている俺は戸惑ったのだが、彼はあの場に居た俺の年齢が14・5歳くらいだと思っているようでそんな事を言う。 「えっと、じゃあカイト。ここ、騎士団の詰所だよね?なんでここにいるの?」 「家にはツキノが居るかもしれないから…」 不貞腐れたように彼は言った。 「一緒に暮らしてるんでしたっけ?」 「別に…あいつが転がり込んできただけで、あそこは僕と僕の父の家だよ」 だったら家主は完全にカイトの方で彼が逃げ隠れする必要はなく、家からツキノを追い出せばいいと思うのだが、彼はまた暗く俯いてしまった。 第一印象は役者のように華やかな人だと思ったのだが、こんな顔をしていると意外とそうでもないのか?と少し戸惑ってしまう。 俺は何とはなしにベッドから立ち上がり彼の横に座り込んだ。 「ここはね、昔から僕達の遊び場だったんだ。ここの人達は僕達を邪魔者扱いしないし、適度に放っておいてくれるから、僕はここが好きなんだ」 「騎士団の詰所が遊び場?」 「そう、本来なら子供が遊んでいていい場所じゃないんだけど、ツキノのおじさんはどこにでも家族を連れ歩く人だから、ここの騎士団員の人達はみんな僕達も家族みたいに扱ってくれるんだ。僕はいわゆる放置子だからね、嬉しかった」
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