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放置子…そういえば、ユリウスがわずか四歳で親に置き去りにされた子供がいたと言っていた、それはもしかして彼の事なのか?
「うちの親ってさ、ちょっと変わっててひとつの事に集中すると他の事が見えなくなっちゃうんだよね。愛されてない訳じゃないって分かってるけど、たびたび存在を忘れられるとさすがに少し心は病むよ。そんな時に僕の面倒を見てくれたのがツキノのおじさんとおばさんでさ、こんな僕をツキノ達兄弟と同じように育ててくれた」
「好きなんだ、その人達の事」
「この世で一番尊敬してる」
カイトは少しだけ笑みを零した、彼等を心から好いている事が俺でも分かる。
「なんで、こんな話ししてるんだろうね…ごめんね、こんな話し聞きたかった訳じゃないよね」
「別にいいと思います。話したい事があるなら話せばいい。俺は何も知らないから意見は何もできないけど、聞くだけならできますよ」
「あは~ノエル優しい…ツキノもそのくらい優しい奴だったら良かったのに…」
カイトは零すように溜息を吐いた。
「カイトはツキノ君が嫌い?」
「そういえばさっき君もいたんだったね…ふふ、別に嫌いじゃないよ。だけど、あいつは無自覚に僕を斬り付ける」
「斬り付ける?」
「そう、あいつは何も考えてない、僕が傷付く事なんてこれっぽっちも気にしない。防御もしてない所から斬り付けられたらやっぱり心は傷付くよ。あいつはいつでも唯我独尊、あいつらしいといえばあいつらしいけど…時々キツイ」
「…そんなにキツイなら、少し距離を置いてみたらどうです?」
「同じ家に暮らしてるのに?」
「いや、そこカイトの家なんだろう?追い出そうよ!ツキノ君はお祖父さんの家で世話になればいいだけの話だろ?」
「親戚の家ってお祖父さんだったんだ…僕、それも聞いてないよ」
カイトはまた瞳を伏せて俯いた。
「僕はツキノに逆らえない、だって僕の一番好きな人達がツキノの保護者なんだよ、ツキノに嫌われたら、僕はもうあの人達といられなくなる」
「それはないと思うな。俺はその人達をよく知らないけど、ユリウスさんからいくらかは話しを聞きましたよ、困っている子供は放っておけない人達なんでしょう?」
「僕はもうすぐ大人になるよ、何もできない子供じゃなくなる…そうしたら、どうしたってあの人達とは関われなくなる」
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