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カイトの心の内は悲観的で、どこから慰めたものか分からない。
「それでも自分の負担になるなら、そんな人間関係はよくないと思います…」
「うん…そうだよねぇ…分かってるんだけどさ」
カイトはまた大きく息を吐いた。
「僕の『運命』ノエルみたいに優しい人だったら良かったのに…」
「運命…?」
カイトはこちらを向いて微かに笑みを見せた。
「ノエルは『運命の番』って知ってる?」
「運命の番?」
「そう、生まれた時から決まってる『運命の番』世界で一人だけ、自分だけの運命の人」
「えっと…運命の赤い糸的な?」
「うん、そういう感じ。僕のね『運命の番』はたぶんツキノなんだよ」
意味が分からなくて首を傾げた。
「好きでもないのに?」
「嫌いじゃないって言ったよ。別に嫌いじゃないし、嫌いにはなれない…だけど、愛せないんだ」
「意味がよく分かりません。それは結ばれてるとは言えないでしょう?」
「これは決まってるんだよ、僕達には分かってる。ツキノは『運命』だけど『運命』は僕に優しくない」
「何が分かってるのか分かりませんけど、それ間違ってると思います!どうしてそんな風に決め付けるんですか!そもそもカイトもツキノも男だし、そんな運命とか意味が分からない!」
「君はバース性を知らないんだね」
カイトは呟くようにそう言った。
「あの、αとかΩとかいう?さっき少しだけ聞きましたけど、そういえばカイトはΩだってユリウスさん言ってたけど…」
「そう、僕は『男性Ω』Ωの中でも珍しい男のΩ。だけど、それでもΩはΩ」
「そんな事言われたって知った事じゃない、カイトはカイトだろ!普通に男女の性別だって男だ女だとか言う前に、一人の個人じゃないですか?違います!?」
「…それはそうだけど…」
「だったら別にそういうの気にする必要なくないですか?!」
「だけどΩにとってαの子供を産む事は義務みたいなものだから…」
「それこそ知った事じゃないですよ、産みたくないなら産まなきゃいい。女の人だって全員が全員子供を産んでる訳じゃない。義務って何?自分の人生に足枷付けても生き辛くなるだけだ!」
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