動き出す過去の亡霊

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カイトは驚いたように目をぱちくりとしばたかせた。 「僕、そんな事言われたの初めてだよ。αの人達は優しいけど、僕がΩだって分かると皆腫れ物扱いだよ。酷い扱いを受けてるΩもいるって聞く中、僕なんて凄く恵まれた環境で育ててもらえたと思ってる。だけど、それでもやっぱり僕は他人とは違うってそう思ってたのに…」 「俺とカイトのどこが違うの?同じ人間だろ!こうやって会話もできるし、友達にだってなれるよ。狭い世界で生きる事なんてない、やろうと思えばなんだってできるし、人生諦めて生きたら勿体ないだろ!」 言い切った俺にまたカイトは瞳を大きく見開いて、そしてその内くすくすと笑い出した。 なんかこの人、線が細いせいかちょっと可愛いな… 「ノエル最高。すごく気持ちが上向いたよ、ありがとう」 俯くのを止めて、カイトは真っ直ぐに俺を見た。 その顔は何かを吹っ切ったような表情で、こんな自分でも少しは人の役に立てたかな?と胸を撫で下ろした。 「ところで、最初の質問に戻るけどノエルは何でここへ来たの?」 「なんか街で人攫いがあったみたいで、一緒に居たユリウスさんが行っちゃったんですよね。それで、ここで待っててって言われたので」 「人攫い?物騒だね。でもユリウスさんってユリウス兄さんの事だよね?兄さんとはどういう知り合い?」 「なんていうか…行きがかり上、父親探しを手伝ってもらってます」 俺は言葉を選んでそう言った。 もしかしたらカイトが尊敬しているおじさんの隠し子かも、なんて今この場で言う訳にはいかない。 「父親?君もお父さんいないんだ?僕と同じだね」 にっこり笑顔で彼は言った。 あれ?と俺は首を傾げる。確かカイトの家はカイトと父親の家だと先程カイト自身が言っていたはずなのに… 「さっきカイトはお父さんと暮らしてるって言ってなかった?」 「うん、そう。一緒に暮らしてるのも父さんだけど、あの人は母親だから」
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