動き出す過去の亡霊

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ますます意味が分からなくて、クエスチョンマークを顔全体に浮かべて首を傾げると、カイトはまた可笑しそうにくすくすと笑った。 「さっきΩの話したよね。うちの父さんも僕と同じ『男性Ω』だから、あの人は僕の父さんなんだけど、僕を産んだ母親なんだよ」 父親で母親…常識で理解が追いつかない… 「あはは、βの君には理解しづらいよね。うちの父さん外見は完全に男だから、普段は父親で通してるんだよ。僕の父親はこの世界のどこかにいるらしいんだけど、父さんはそれを僕に教えてくれない」 「あ…それ、うちと一緒」 「ノエルも教えてもらえないの?」 「うん。もしかしたら俺、不倫の子なのかもしれない」 「そっかぁ、僕もたぶんそうだと思ってるよ」 先程と反対に今度は俺が俯き気味にそう言うと、何故かカイトはあっけらかんと笑顔で「同じだぁ」と笑った。 「え…なんでそんなさらっと、ショックとかないんですか?」 「ないよ、僕、自分の父親なんとなく見当ついてるから」 「そうなんだ?だったら、ちゃんとその人に認めてもらえばいいのに」 「迷惑かけられないよ、大好きな人だし、立場のある人だからね。父さんに何度聞いても違うって否定されるし、言えないんだと思う」 なんだかカイトは少し嬉しそうなのが、不思議で仕方がない。 父親が自分を認めていないというのに、そんな顔ができる意味が分からない。 「僕の父さん元々ランティスの人なんだ、その人も元々ランティスの人でさ、幼馴染なんだって。その人奥さんと結婚してこっちに越して来たらしいんだけど、うちの父さんもそれを追っかけるみたいにしてこっちに引っ越してきてるんだよ、可笑しいよね。だから僕は父さんがその人の事一方的に好きだったんじゃないかって思ってる。せめて子供だけでも欲しくて、僕を産んだんじゃないかな…って、そう思ってる」 「ちょっと待って、それってどうなの?自分には奥さんいるのに、自分を好いているだろう人に、応えられもしないくせに手を出したって事?その人最低じゃないですか!」 「優しい人だから、拒めなかったんじゃないかなぁ。うちの父さんなんだかんだで我は通す人だし、だから余計その人、僕の事、放っておけなかったんじゃないかなぁ…」
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