動き出す過去の亡霊

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なんだか含みのある言い方だ。けれど、やはり彼は嬉しそうに笑うのだ。 優しい人、カイトはその人が好きだと言い、立場があり、妻もいる…どうにも符号が揃いすぎる。 「それって、もしかして…」 「言っちゃ駄目。僕、困らせたい訳じゃないんだ。ただ、そう思ってるだけ。でも…きっとそう」 唇の前に人差し指を立てて「これはここだけの話、君も誰にも言っちゃ駄目だよ」と、彼はやはりとても嬉しそうに笑った。 自分のここイリヤにおける情報はまだまだ少ない。それでも、カイトが指し示すその人物に心当たりがありすぎて、どうにも苛立ちを抑えられない。 確かにカイトの髪はユリウスと同じ綺麗な金色で、最初にカイトとツキノを見た時、カイトの方をユリウスの弟だと思った程度に綺麗な笑顔まで彼等2人は似ているのだ。 けれどカイトが何故そんなに嬉しそうに笑っていられるのか俺にはとても納得がいかない。 「なんで黙ってるんですか!おかしいでしょう!?父親だったら父親らしくちゃんと子供を認知するのが親の務めじゃないんですか!?」 「え?あれ?なんでそんなに怒るの?僕のことなんだから、別にそんな風に君が怒ることなんてないよ。別に僕は認知なんかされなくても構わないんだから」 「でも、自分の父親だって認めて欲しいんじゃないんですか!?」 「うん、まぁ、それはねぇ…でも、いいんだ。だって僕はあの人の家族も大好きなんだよ?幸せに暮らしてる家族には知らなくていい事だってあると思わない?」 「それは…!」 どうにもこうにももどかしい、これはきっとカイトの待遇を怒っているのではない、俺は俺自身の待遇が彼と同じだという事に腹を立てているのだ。 ここで彼を相手に怒りをぶつけても意味がないし、彼もきっと迷惑だ。なのに燻ぶる心は抑えられずに俺は自分自身を落ち着けるように大きく深呼吸をして、拳を握った。 「子供には、親を知る権利があると思います」 「うん、そうだよねぇ。ノエルもお父さん、見付かるといいねぇ」 その父親がもし同じだとしたら、それを知ったらこの人は一体どんな顔をするのだろう… にっこり笑顔で俺の事を応援してくれた彼に俺はもうそれ以上何も告げることはできなかった。
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