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ここまでの話を総合してΩというのはどうやらか弱いらしいという俺のイメージは一気に崩壊する。なんかこの人無茶苦茶だ。
スキップでもして出て行ってしまいそうなカイトの腕を掴んで「駄目ですってば!」と説得を試みるのだが、彼は「なんで?」と不思議顔をする。可愛い顔しても駄目なものは駄目だからっ!
そんな風に俺達が2人で揉みあっていると、突然ノックもなく部屋の扉が開いた。
俺達はそれに最初気付かなかったのだが、入ってきた人物はそれに苛立ったように、どん!と扉を拳で叩いた。
「カイト!帰るぞ!」
音に驚いてそちらを見やれば不機嫌全開の表情のツキノがそこには立っていて、腕を組んでこちらを睨んだかと思うと、俺の腕の中からカイトを奪い返すかのように彼はカイトの腕を引いた。
「ツキノ…なんで?」
カイトは驚いたような表情でツキノを見やる。
「ユリが家に来た。だから、迎えに来た」
全く意味が分からないよ…
ツキノはぎっとこちらを睨み付ける。
「またお前か、その手を放せ」
別に放すのは構わないのだが、また2人で喧嘩にでもなるのではないか、と一抹の不安が過ぎる。
だが、そんな不安をよそにカイトが言い放ったのは「ツキノ、Ω狩りだって!Ω狩りを狩に行こうよっ!」というとんでも発言で、この人何言ってるの…と俺は思考停止に陥った。
そしてそれはツキノも同じだったのか、彼は大きく溜息を吐く。
「俺はそういう面倒くさいのは好きじゃない。本職に任せておけ」
「なんでぇ?楽しそうじゃない?」
「労力の無駄」
「ツキノは燃費悪いもんねぇ」
なんか普通に会話始めた…あんた達、喧嘩してたんじゃなかったか!?
「はぁ…ともかく帰るぞ。さっさと来い」
「僕は今、家出中だよっ」
ぷいっとそっぽを向いたカイトにツキノは苛立ったように彼を睨み付け「ぐだぐだ抜かすな、さっさと来い」と吐き捨てた。
不貞腐れたような表情は見せるのだが、カイトはそれにしぶしぶ頷く。なんでそこでカイトは従ってしまうのかもよく分からないのだが、この2人を見ているとどっちが正しい事を言っているのかもよく分からない…
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