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賑やかな声で目を覚ます。
あれ?ここどこだっけ…?
まだ、半分夢うつつで瞳を擦ると、肩から毛布がするりと落ちた。
えっと…あぁ、そうか自分はイリヤの騎士団の詰所にいたんだった。
毛布はなかったはずだから、きっと誰かがかけてくれたんだな…とその毛布を拾い上げると毛布と一緒に落ちたのだろうメモ書きが目に入った。
それはユリウスからの置手紙で『事件の解決にはもうしばらく時間がかかりそうだ』という内容だった。
そこには『必ず迎えに戻るから、待っていて』と書かれていたのだが、自分は正直そこまでユリウスに気にかけてもらえるような間柄でもないのに申し訳ないなと思ってしまう。
窓の外は白々と明けてきていて、彼は夜通し事件解決の為に働いているのかと思うと、そんな時にまで気にかけてくれるなんて…とそれにも申し訳ない気持ちが湧いてくる。
賑やかな声は部屋の外から聞こえてきていて、騎士団員達が何人か出勤交替をしているのだろうな、と推測された。
挨拶をした方がいい?それともここで大人しくしていた方がいいのだろうか?
そろりと部屋の扉を開けると、やはり何人もの男達が思い思いに活動していて、どうにも声はかけづらい。
とりあえず、いいか…と思い部屋に戻り、今度は椅子に腰掛けた。
それにしても、少し腹が減った。そういえば昨日はユリウスに奢ってもらった昼から何も食べていない。
ただ待っているだけというのはどうにも退屈なのだが、下手に外に出て行って入れ違いになるのも迷惑かと思うと、どうにも動けず途方に暮れた。
しばらくぼーっとしているとノックの音と共に一人の男性が入ってきた。
昨日、ここ第一騎士団の副団長だと言っていたキースさんだ。
「あ…起きてたね。良かった。昨晩一度坊も戻って来たんだけど、君、寝ちゃってたからそのままにしておいたんだ、よく寝れた?」
「はい、毛布ありがとうございます」
「はは、そのくらいはね。お腹空いたかなと思って朝食買ってきたけど、食べる?」
「え…ありがとうございます。お代…」
「いいよ、いいよ。自分もまだぺーぺーの頃、君のお母さんに色々サービスして貰ったからね、恩返しだ」
「そうなんですか…?」
「メリッサさんの作るご飯は美味しかったからね」
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