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そう言ってキースは袋に入った幾らかの食料を手渡してくれた。それは一人で食べるにはいささか大量で、困ったように顔を上げると「坊が大食だし、好き嫌いも分からなかったから大目に買い込んできたけど、さすがに多かったかな?」と彼は笑った。
「一人では食べ切れません」
「あはは、俺も食べるよ。ノエル君は好きなの取って」
そう言って、キースは自分も椅子に腰掛け「疲れたぁ」と伸びをした。
「あの、事件はどうなりました?」
「ん?まだ何とも。どうやら犯人のアジトは掴んだらしいけど、捕まっている人間の数と犯人の数なんか詳しい状況が分からなくて、今はそれを調べている所だって。どうやら応援の必要はなかったみたいで、第3騎士団がメインで動いてるみたいだから、そのうち解決すると思うよ」
「そうなんですね、良かった」
俺は差し入れられた食料の中から、ハムサンドを手に取って口に入れた。
腹ペコだったので、尚更美味しくぺろりと平らげてしまう。もっと食べろと勧められるがまま次に手を出すと、キースもようやく食事を始めた。
「そういえば坊に聞いたよ、君、ここまで一人で来たんだってね。しかも誰にも言わずに。コリー副団長、物凄く怒りそう。お祖父さん怖くない?俺、苦手なんだよね」
「そうですか?じいちゃん別に怖くないですよ。何考えてるかよく分からない時もありますけど、基本的に考えてるふりして何も考えてないし」
「え…そんな感じ?」
キースは戸惑ったような表情を見せるのだが、祖父の何がそんなに怖いのかが分からない。
ただの風呂好きな年寄りで、少し頑固なだけの普通の爺さまなんだけどな…確かに怖い時は怖いのだが理不尽に怒ったりはしない、怒る時はちゃんと理由のある怒り方なので、自分は祖父をそこまで怖いと思った事はない。
そんな感じにキースと世間話をしながら朝食を食べていると、ぱたぱたと軽快な足音と共に部屋の扉が盛大に開かれた。
何事かとその扉を見やると「ノエル、見~っけ!」とウィルが勢いのままどーんと体当たりしてきて、思わずむせった。
そういえば昨日、現れた時もこんな感じの登場の仕方だったな…と思わず少し遠い目をしてしまう。なんというか、相手の状況は確認して体当たりしようよ…と思わなくもない。
「ウィル坊は相変わらず元気だなぁ」
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