動き出す過去の亡霊

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「ねぇ、ウィル!どこ行くの!?」 「着くまでナイショ!本当は来ちゃ駄目って言われてるしっ」 は!?来ちゃ駄目…って、それって行っていい場所じゃないだろう!? 連れられるままに自分も走っているが、駄目と言われた所にわざわざ行こうと言うウィルの神経が分からない。 「待ってウィル!駄目って言われた事は守らないと駄目だろう!」 「うん、だから近付かないよ。遠くから見るだけ」 遠くから見る?俺は一体どこへ連れて行かれようとしてるんだ? ウィルは楽しそうに駆けて駆けて、お祭りの喧騒も抜け出して、着いた先は少し坂を上がった小高い展望台のような場所だった。 公園も兼ねているのだろうその場所は、特別何かがありそうな感じもせず、俺は訳も分からず、とりあえず息を整えた。 「ウィル、ここどこ?何があるんだ?」 「あそこっ!」 ウィルは駆け上がるように展望台に登ると、そこから真っ直ぐに指を指す。 その指先を見てみても、何があるのか分からない俺は首を傾げた。そこにはたくさんの屋敷が立ち並んでいるだけで、特に何も変わった様子はなかったからだ。 「何?俺には何があるのか分からないんだけど?」 「あそこっ、人攫いのアジトだよ!」 満面の笑みで言ったウィルの言葉は物騒この上ない。 え…?と、俺はもう一度そのウィルの指差す先を見るのだが、やはり何も変わった所は見当たらず、どう返答したものか戸惑った。 「人攫いって昨日言ってた?」 「うん、そうだよ」 民家というほど小さな家ではない幾つかの大きな屋敷が立ち並ぶ、そこは閑静な住宅街だ。 悪い奴のアジトというのはもっとせせこましい場所にこっそり在りそうな物なのだが、その屋敷群は大きな存在感ででん!とそこに在る。 「本当にあそこなのか?」 「父ちゃんが言ってたから間違いないよっ」 機密漏えいにも程があるだろう、騎士団長…調査内容子供に喋っちゃ駄目だ。
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