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「でもさ、危ないから近付くなって。だからここから見よ」
「いや…見ててどうすんの?」
「え?楽しくない?大捕り物だよ?」
野次馬かっ!
わくわく顔のウィル、大捕り物見たいんだな…別段何かしたい事があった訳じゃないからいいけどさ。
「はぁ、どの屋敷がそうなんだ?」
「あそこ、あの赤い煉瓦の屋根の家。屋根の上に人がいるだろ?あそこだよ」
目を細めてその屋敷を見やれば、確かに屋根の上に何人か人影が見える。
「あの人達何?あんなとこで何してんの?」
「あの人達は『黒の騎士団』って言って、ファルス騎士団の諜報部隊の人達だよ」
「諜報部隊…そんなのあるんだ?」
「うん、そうらしいよ。あんまり公になってないけどね」
展望台に座り込んでウィルはその屋敷を見やる。俺もそれに倣いウィルの横に座り込んだ。
「あの人達あそこで何やってんだろうな?」
「見張りじゃない?よく見ると屋敷の周りに父ちゃん達がいるのも見えるよ。あそこの物影とか、たぶんそう」
そう言ってウィルが指差した先はとても見え難いのだが、何人かの人影が忙しなく動いているのが見える。
「なんか、こんな風に見てると丸見えだな。あんなんで大丈夫なのか?」
「今、ここに誰もいないんだから平気じゃない?あそこがよく見えるのはここだけだよ」
確かに自分達がいる展望台は周りより高い位置にあって、その目標の屋敷は他の屋敷に囲まれているので、屋敷の中の者達は気付かないのかもしれない。
「お祭りの間はここに遊びに来る人もそんなにいないだろうしねぇ」
祭りの喧騒は少し遠くに聞こえてはくるが、ウィルの言う通り周りに人はおらず、だったら大丈夫なのかな…と俺はまたその屋敷を見やった。
「それで、その大捕り物っていつ始まるの?」
「う~ん?それは聞いてないから分かんない」
なんと計画性のない…先程キースはまだ人質の数や犯人の数が分からないと言っていた。
あれだけ大きな屋敷だ、下手に踏み込んで返り討ちに遭うのもいただけない。
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