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「こいつ!オレ達何もしてないのに、急に襲ってきたんだ!」
ウィルは俺のその赤毛を隠すようにぎゅうと頭を抱え込んでそう叫んだ。
「あ?それは聞き捨てならんな…少し話を聞かせてもらおうか」
声をかけてきた男の顔はウィルに抱えられているので全く見えないのだが、その声が先程までよりワントーン低くなったので、その人も男の行動に不快を示した事はすぐに分かった。
「メリア人に何をしようが、別に構わねぇだろう。あんた達騎士団員は我が国の人間を守っているんじゃなかったか?」
俺を襲った男の言葉でやって来た男は騎士団員なのだと分かる。
「メリア人だとか、ファルス人だとか、俺はどうでもいいんだよ。俺はなぁ、女子供に手を上げる奴は大嫌いなんだよっ!」
がっと鈍い音が響き、それに合わせるようにくぐもった呻き声が聞こえた。
続いて、何度かの殴打音、何が起こっているのか分からなくて、俺はウィルの腕の中からそっと周りを窺った。それに気付いたのかウィルも腕を離してくれて、ようやく俺の視界が開ける。
そこにいたのは大きな男だった。
騎士団員というのはやはり皆体格がいいのだろう、その男もウィルの父親同様、熊のように大きな男だった。
男は何度か俺を襲った男を痛めつけ、その男の抵抗がなくなった所でようやく手を離して男の腕を縛り上げた。
「話しは詰所で聞かせてもらう。悪いがお前等も一緒に来い」
男は笑みもなく俺達にそう告げた。
「スタール団長、かっけー」
「…ウィル、知り合い?」
「うん、父ちゃんの友達。第5騎士団のスタール団長だよ」
団長、騎士団長なんだ、この人。
「誰かと思ったら、お前ウィル坊か。なんでこんな所にいたんだ?ここは祭りとは関係ないだろ」
「えへへ…ちょっとね」
「まさか、アレを見に来たんじゃないだろうな?」
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