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男が顎で示したのが、まさに見ていた屋敷で、ウィルは「バレちゃった」と舌を出した。
「こんな事があるといかんと思って、見回りに来て正解だったな…誰に聞いた?」
「え?父ちゃんだけど?」
男はあからさまに脱力した様子で肩を落とし「あの人は警戒心が足りなさ過ぎる…」とぶつぶつと小さく零した。
彼は一人で見回りに来た訳ではなかったようで、そのうち何人かのやはり騎士団員とおもしき男達が何人か寄って来た。
捕まえた男を部下に引き渡し連行するスタールが歩き出すのを追いかけるように俺達も彼について歩き出す。
「坊主怪我は?」
「髪、引っ張られただけなんで…まだちょっと痛いけど、たぶん大丈夫です」
「そうか…」とやはり彼はにこりともせずそう言った。この人、基本的に愛想はないんだな。
それにしても連行されている浮浪者の人、さっきまでの勢いはどこへ行ったのか非常に大人しい。余程スタールの拳が効いたのだろうか?
それにしても彼は何かに浮かされているように何事かぶつぶつ呟き続けていて気持ちが悪い事この上ない。
「坊主はウィル坊の友達か?」
「あ、はい」
「悪かったな、こんなメリア人差別をするような奴はそうそうこの国にはいないから、気を悪くせんでくれ」
「あぁ、俺メリア人じゃないんで、別に…」
「なんだ、違うのか?それは悪かった」
「こんな赤髪なんで、慣れてます」
愛想はないけれど妙に気を遣われて、この人いい人だな…となんとなく思った。
「坊主名前は?」
「ノエルです。ノエル・カーティス」
瞬間驚いたように男がこちらを凝視した。
「ノエル…カーティス?」
何にそんなに驚かれているのか分からずに、俺は首を傾げる。もしかしてこの人も祖父を知っているのだろうか?
「なんかうちの祖父、昔騎士団で副団長をしていたらしいんですけど、もしかして知ってます?」
「坊主はもしかして、コリー副団長の?」
「はい、孫です」
何やらスタールは非常に複雑な顔でこちらを見ている。一体何なんだろう?
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