321人が本棚に入れています
本棚に追加
「その名前は誰が付けた?」
「え?えっと、母が付けたと聞いてますけど…」
「そうか…」とスタールはひとつ頷き「父親はメリア人なのか…?」と問うてくる。
「分からないんです、自分の父親が誰なのか。だから俺はここに父親を探しに来ました」
ますます複雑な顔で彼は俺を見やり、自分もどういう顔をしていいのか分からない。
「もしかして、俺の父親に心当たりがありますか…?」
「いや…俺は知らない」
瞳を逸らすように彼は前を向いてしまって、なんだかその行動は少しばかり不自然に感じたのだが、その理由も分からず首を傾げた。
「母ちゃんは一緒に来てるのか?」
「いいえ、俺一人でここまで来ました」
こちらも見ずに彼は「そうか…」と頷いて、その後はもう何も言ってはくれなかったので、俺はウィルと肩を並べる。
「ウィル、さっきは助けてくれて、ありがとう」
「オレ、ほとんど何もできなかったじゃん…やっぱり実戦じゃまだダメだな」
「そんな事ない。一人だったら何されてたか分からなかったし、怖かった。ウィルがいて良かったよ」
俺の言葉に「そう?」とウィルは少し照れくさそうに笑みを零した。
実際自分一人の時にこんな理不尽な襲われ方をしたらと思うとぞっとする、本当に一人じゃなくて良かった。
程なくして、俺達は第5騎士団の詰所にたどり着く。外観は基本的に第1騎士団と変わらないが、中は少しだけ第1より手狭に感じた。
「暴漢捕まえてきた。取調べて、あとは祭りが終わるまで牢に放り込んでおけ」
そう言ってスタールはその場にいた別の団員に男を引き渡して「お前達にも一通り話しは聞かせて貰うぞ」と腕を組んだ。
「オレ達別に何もしてないよ。あそこで屋敷眺めてただけだよ、な?ノエル?」
「うん、そう。突然髪掴まれて、赤毛を晒してる奴が悪いって…問答無用でしたよ」
「最近はああいう輩が時々湧いて出るのは何でなのか…」
最初のコメントを投稿しよう!