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「騎士団長、何があったのです?!」
その中の一人の男が、つかつかと寄って来て、スタールに尋ねる。
「あぁ、大した事じゃねぇ、少しばかり暴漢を取り押さえるのに手間どった」
すらりとその長身のその若い男は他の騎士団員より少しばかり細身で威圧感に欠けるのだが、立場的には割りと高い人間なのだろう、スタールが飛ばした指示を確認するかのように回りに目を配っていく。
その過程で、男はふとこちらに目を留めた。
「この子は?」
「あぁ…コリー副団長の孫らしい」
瞬間その男も他の者と同じように驚いたような表情を見せる。じいちゃん意外と有名人だったんだな…
「コリー副団長の…?ということは、メリッサさんの?」
「まぁ、そうなんだろうな…」
男は目を細めるようにまじまじとこちらを見るので、どう反応を返していいのか分からない。
「えっと…あなたも祖父の知り合いですか?」
「え?あぁ…申し訳ない。はい、そうですよ。私の名はハリー。ハリー・ブライトと申します。ここ第5騎士団で副団長を務めさせていただいています」
若いのに副団長…この国の騎士団はこの武闘会で出世が決まるとは聞いていたが、本当に年齢は関係ないのだな…と妙な感心をしてしまった。
「俺はノエルです。ノエル・カーティス」
瞬間また驚いたような表情を見せてハリーはスタールを見やったのだが、彼は一言「偶然だ」とぼそりと呟いた。
なんだろう、この意味深な感じ…この人達何か知ってるの?
「因みに年齢を聞いても?」
「え?あぁ…12歳です」
俺の言葉にハリー副団長はまた考え込むように腕を組み「君、大人っぽいねぇ」と呟き、またスタールを見やる。
彼は居心地悪そうな顔をして「俺を見るな」とぼそりと呟いた。
「あの…もしかして、何か知っているんですか?俺、ここに自分の父親を捜しに来たんです、もし何か知っているなら…」
「父親を?父親が誰か分からないのかい?」
「はい、母は何も教えてくれないので…」
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