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ハリーは少し考え込むような表情を見せたのだが、しばらくすると彼は首を横に振って「私は何も…」とそう言った。
「そういえば先程から気になっていたのですが、団長、顔色悪くないですか…?」
「あ?まぁ、ちぃっと怪我を…」
言いかけたスタールを上から下まで見渡して、ハリーは不自然に脇腹を押さえるスタールにすぐに気が付いた。
「あなたは何をしているのですか!?怪我をしているのならさっさと言う!手を離して、って…酷い怪我じゃないですか!あなたって人はもう!!」
すぐに身を翻し、どこかへ行ったかと思ったら、すぐに戻ってきたハリーが抱えていたのは救急セットで、彼はすぐにてきぱきとその傷に処置を施していく。
「まったく毎度毎度、生傷が絶えないことですね。おかげでこんな事ばかりすっかり手慣れてしまいましたよ」
「…おまえはすっかり口が悪くなったよな…誰の影響だ?」
「誰のせいでもありません、けれど、しいて言うならあなたです」
ハリーの返答にスタールは苦虫を噛み潰したような苦い表情を見せる。
なんだかこの2人仲良いな。まぁ、騎士団長と副団長の仲が悪いよりはいいのだろうけれど。
ハリーがスタールの怪我の手当てをしていると、医者を呼びに走っていた騎士団員が慌てたように戻ってきた。そしてそれと同時に現れた、派手な人。
「怪我人だって?おや、スタール君もかい?」
彼は金色の髪をなびかせてにこやかに笑みを見せた。瞬間、渋い顔のスタールの表情が更に渋い顔へと変わる。
「おい、誰がこいつを連れて来いと言った?他にもっとマトモな医者はいなかったのか?」
言われた騎士団員もそれを言われるだろう事は分かっていたのだろう、即座に「すみません」と頭を下げた。
「手が空いている医師の方が他にいなくて…」
「スタール、酷い言い草だな。僕はこれでもちゃんと医師免許は持っているんだよ?」
「お前の専門は薬学で外科の方は専門外だろうが!」
「薬はちゃんと持ってきたってば」
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