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見せびらかすようにその派手な男は鞄を持ち上げる。
歳は幾つくらいなんだろう?若くも見えるし、老けても見える、丸眼鏡の奥の瞳を細めて笑うその顔立ちはまるで猫のようだ。
しかし、彼の特徴はなんといってもその輝く金色の髪。クセが強いのかふわふわとうねっていて、それを適当に括っているだけなので、纏まりが悪く、一層彼を派手に見せているのだ。
それにしても、なんだかこの感じには既視感を感じる。
「俺はお前の薬は信用しないぞ!」
「大丈夫だって、今日はちゃんと普通の薬だよ。僕だって実験をやっていい時と悪い時の区別くらいちゃんと付けてるんだからね」
スタールの眉間の皺はますます深くなっていく、騎士団長はこのお医者さんのこと嫌いなのかな?
「さぁ、怪我人はどこ?んん?これは酷いねぇ。大丈夫、僕の薬は良く効くよ」
にっこり微笑むその人に笑みを向けられた騎士団員達は皆一様に脅えたような表情を見せているのは何故なのか?
しかし、そんな感じでも彼の手際はとても良く、怪我人の治療はあっという間に片付いていく、ただ手当てされる側の人間の顔は悲壮感が漂っていて、なんだか見ているこっちの方が心配になった。
「もう、皆そんなに怖がらなくていいのに。僕は怪我人・病人には優しいよ?実験に使うのは健康な人間だけって決めているからね」
えぇと…それもどうなのだろうか…
「あれ?君、見かけない子だね?新人さん?」
突然声を掛けられ驚いた。
「そいつはまだ子供だ、手を出すな!」
「ん?そうなの?君幾つ?」
「12歳です」
「へぇ、うちの子より下なんだ。君大きいねぇ」
瞳を細めて彼は笑う。やっぱりこの人なんだか似てる。
「カイル先生、お代は別途請求お願いします。しかし、うちの団員を実験に使うのは止めてください」
「ハリー、そんなに僕を目の敵にする事ないじゃないか。僕はちゃんとやる時にはやる男だよ?」
「それは分かっていますが、うちの団員が脅えるので止めてください」
「騎士団員の子達は皆頑丈だから実験にはうってつけなのに…」
「何度も言わせないでください。うちの配下は実験台ではありません」
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