動き続ける事件の闇

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カイルと呼ばれたその医師は「仕方がないね」と肩を竦めた。 「やっぱり行くならナダールの所か」 「あっちでも迷惑しています。団長が不在だからって、変なちょっかいをかけないでください」 「ハリー、君は昔の方が可愛げがあったよ…」 「あなた達みたいな大人に揉まれて育てば誰でもこうなります!」 毅然とした態度で言い切ったハリーに、カイル医師は諦めたようにまた肩を竦めた。 「新薬の開発には尊い犠牲が常に必要だというのに…」 「せめて許可を取ってからやるのが筋です」 「承諾はいつも取っているだろ?」 「事後承諾は許可とは言いません」 なんだか、2人の言い合いを聞いているだけで、この先生はとんでもない人なのだと言うのはなんとなく分かる。そして、こんな言動で人を振り回す人を俺は最近見たばかりだ。 「もしかして、先生ってカイトの…?」 「あぁ、君、カイトの友達?うちの子可愛いだろ?仲良くしてやってね」 あぁぁあぁぁ、やっぱり!なんか違う!聞いてた印象と違う! 妻子ある男に手を出された日陰の人のイメージ全然ない!ってか、この人がむしろぐいぐいいくタイプだろ、優しい人なら押し切られるのなんとなく分かる… 「ところで君、名前は?どこの子?」 「え?ノエルです。ノエル・カーティス…」 瞬間カイルはまたしても他の人同様驚いたような表情を見せた。この人も祖父ちゃんの知り合いなのか? 「君、もしかしてメリッサの?!うわぁ、驚いた!大きくなったねぇ」 祖父ちゃんじゃないのか?母さんの方と知り合い? 「メリッサは?来てないの?」 「来てないです。先生は母と知り合いですか?」 「ルーンにいた頃懇意にしてもらっていたよ。というか、メリッサのお産で君を取り上げたの僕だよ?あの赤ん坊がもうこんなに大きいんだ…カイトも育つ訳だよねぇ」 なんだかしみじみした表情のカイル。まさかこの人が自分を取り上げた人だとは思わなかった。 「あ…もしかしてノエルは父親に会いに来たの?」 言われた言葉に硬直した?え?この人もしかして俺の父親知ってるの?! 「あれ?違うの?」 「先生、俺の父親誰だか知ってるんですか!?」 「え?聞いてない…?」
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