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「はは、そのようですね。ですが、お嬢は別に隔離されているようで、やはり中の事は分からない様子です。お嬢の居場所だけは分かっているのですが、それ以外の方々は一般市民ですからね」
「隔離って…何をやらかしたのやら」
呆れたようにスタールは息を吐く。
『お嬢』その言葉はここイリヤに来て何度か聞いている。ユリウスの『坊』と恐らく対で使われているのであろうその言葉はユリウスの姉である「ルイ」の事を指すのだろう。
「そういえば、あの屋敷の持ち主が判明しましたよ」
「お、そうなのか。誰だった?」
「それが…私達にはあまり縁起のいい名前ではなくてですね…」
言いよどんだハリーにスタールは片眉を上げる。
「ロイヤー家ですよ、あのクレール・ロイヤーの弟、クロウがあの屋敷の持ち主です」
「ロイヤー…あの馬鹿貴族の弟か、これは確かに縁起が悪い。あいつ等確か貴族の資格は剥奪されたんじゃなかったか?」
「私もそのように伺っていたのですけどね…」
二人揃って溜息を吐くのを何とはなしに聞いていた俺なのだが、よく考えたら俺、こんな話聞いていていいものだろうか?
「あぁ、そういえばそこに縁者がいるじゃないか。お前、本家がどうなってるか、じいさんから聞いてたりしないか?」
突然話を振られて驚いた。
「は?…え?本家?」
「カーティスの家はロイヤーの分家だと聞いているが、聞いていないか?」
「そんな事言われても…うち、そもそも貴族なんかじゃないですよ?」
「なんだ、じいさんは本当に何も話してないんだな。カーティス家はそれほど大きくはないが、貴族の端くれのはずだぞ」
「そんなの、聞いたことないです…」
全くの初耳に動揺を隠せない。我が家が貴族の出だなんて、誰もそんな事一言ですら言った事はないはずだ。
「コリー副団長は、そういうしがらみも面倒になってしまったのですかね。あの方らしいといえばそれまでですが」
「確かにな」とスタールもハリーに同意する形で頷いた。
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