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「さっきまで手繋いでたんだけど、引っ張られた時に離れちゃって…」と幼い子供は涙目で訴える、それを慌てて「泣かなくていい」と慰めつつも、困ったようにその人はまた周りを見回した。
子供達は彼女の子供だろうか?それにしても数が多い、ぱっと見て5人はいるし、年齢はばらばらだがさすがにこの子供達が全員彼女の子供とは考えにくい。
それでも酷く困った様子に見ていられず、俺は思わずその人に声をかけた。
「どうかしましたか?」
「え?あ…子供が一人はぐれたみたいで、その辺に見当たらなくて。近くで赤毛の女の子を見なかった?」
「赤毛の?」
そう言われれば彼女の髪も綺麗な赤髪だ、彼女はメリア人なのだろうか?なんだか瞳も赤いし、こんな瞳の色の人初めて見た。彼女が連れている子供達は赤毛もいるのだが、髪色も瞳の色もばらばらでなんの団体なのかよく分からない。
「しっかりした子だから一人でも目的地まで辿り着けるとは思うけど…」
そう言いながらも彼女はきょろきょろと周りを見渡している、それでもその荒波のような人波の中から子供一人を探し出すのは難しいと思われた。しかも、彼女の周りには不安そうな表情を浮かべた子供達が何人もいる。
「ねぇね、迷子…?どっか行っちゃった…?」
先程手を繋いでいたと言っていた幼子が途端に瞳を潤ませ泣き出した。
「あぁぁあ、泣くな。大丈夫だから!ねぇねはちゃんと、先に行ってる、とりあえず行こう!」
「え?ちょっと、それ大丈夫なんですか?!」
「うちの子はちょっとやそっとでへこたれる子じゃないから大丈夫。目的地も分かってるし、さっきまでは一緒にいたんだ、問題ない」
えぇえぇぇ…さすがに母親としてそれはどうなんだ?
いや、でもこれだけの人数の子供を抱えていたらそうなるのか?でも、その子一人で泣いてたらどうすんだよ…
「少年、心配してくれてありがとう、でも大丈夫。もし万が一その辺で赤毛の女の子見付けたら先に行ったって伝えて貰っていい?」
「え…それは構いませんけど」
「じゃあ、よろしく!」
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