動き続ける事件の闇

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それだけ捲し立てると、彼女は「行くよ」と子供達を抱えるようにして行ってしまった。 なんか引率大変そう。だけど子供達も皆彼女の言う事を聞いていて統率は取れている、これで一人でも空気を読まないような子がいたら統率は大変そうだが、纏まりは良さそうだ。 彼女達が人波に姿を消しても、俺はまだそこで人の流れをぼんやり眺めていた。 俺は一体こんな所で何をやっているんだろうな…なんだか、すっかり当初の予定からは外れてしまっている気がする。 父親探しは一進一退、でもカイトの父親(?)は俺の父親を知っているようだったし、彼はここイリヤに俺の父親はいると言ったのだ。 この街のどこかに俺の父親はいるはずだ。 「ママ、見付けたです!」 どすん!と腰の辺りに衝撃が走り思わずよろける。 は?ママ? 声の主は「よかったですぅ」と息を吐きながら上を見上げて俺の顔を見た瞬間「違うです!」と叫んだ。 それは小さな少女だった、とはいえ自分が大き過ぎるだけでたぶん歳は自分と大差ないと思われる。 少女の髪は綺麗な赤髪、そして瞳は真っ赤な真紅。先程の女性の娘なのだと一目で分かった。 「ごめんなさい、人違いです!はわわ…完全にはぐれたですよ…」 先程の女性も綺麗な人だと思ったが、娘も非常に可愛らしい顔立ちで少しドキドキしてしまう。母親の方は長い髪を後ろで括って纏めていたが、彼女はその長い髪を風になびかせぺこぺこと頭を下げた。 「もしかして、さっき子供をたくさん連れてた人を見かけたけど…」 「私みたいな髪色の?こんな瞳の?」 「あ、うん、そう」 「母です、どっちに行きました!?」 「えっと、向こう」 彼女の消えた方向を指差すと彼女は「はわぁ…」と絶句した。 俺は少しばかり背が高いから、人波の向こうが見えるけど、彼女の背は俺の胸辺りまでしかない、どう頑張っても人波しか見えないよなぁ…
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