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「でも、僕はこうして1人になった。突然、ね」
あの日のことは、僕のすべてに刻みこまれたまま、もう消えることはないだろう。
「いつも通り、出動して、それで、帰ってくるはずだったんだ。あぶない場面がたくさんあって、それでも、みんなで切り抜けて、他のNo.では死んだアーミーチャイルドもいたけど、それでもNo.7は、誰一人欠けなかった。みんなで、戦い続けてた。だから、あの日も、そうなるはずだったのに」
幾度となくNo.7全員で生き延びて帰ってくる姿を目にした施設の人達が、驚きをあらわにするのは、どこか快感に似たものがあった。本当ならもう数人の能力が潰えてもおかしくない年頃だったのに、僕達の能力はほんの少し衰えた程度だった。
“No.7はほかとはちがう”
そんな、今になれば絵空事としか思えないことを、僕達は本気で信じていた。
No.7ならアーミーチャイルドを、この世界の何かを、変えられる。
そう思ってしまうほどに、僕は幸運すぎたんだ。
「出動の日の朝、僕が体調を崩しちゃってね」
前日の夜、日付が変わる少し前に、仲間達と明日もがんばろうと軽口混じりの言葉を交わして、僕はいつものように眠りについた。そしてその数時間後、異常なまでの息苦しさと倦怠感に襲われ、隣室の扉を叩いた。
「仲間の1人に連れられて医務室に行ってみたら、神経からくる病の1つだった。病名とか、原因とか、とにかくいろんなことを言われたけど、僕が気になったのは、すぐに効く薬があるか、出動できるか、それだけだったよ」
あの感覚は、もう味わいたくない。
朦朧とする意識と、熱っぽい肌、しんと底冷えする体、そして、徐々にせばまってゆく視野。
僕を取り巻くすべてが不快だった。
僕の身体をそっと支える仲間だけが、僕に人としての核を与えていた。
「やっぱり、人生そんなにうまくいかないんだね」
僕が呟くそうにそう言えば、シキくんの目がそっと伏せられる。
「絶対安静の命令が出て、回復するまで訓練は禁止された。勿論、出動も」
僕は1人医務室のすぐそばの部屋で、ベッドに寝かされ必要最低限のものをその周囲に揃えられた。その空間はぼやけた視界がありがたいと思うほどに殺風景で、病のせいで揺らぐ僕の心を、ますます揺さぶった。
「次の日の朝、No.7のみんなが来てくれたよ。僕のもとに行くのを禁止した、施設の人達の目を盗んで」
仲間達は、悪戯っぽく笑っていた。幼い頃から何も変わらないその笑顔が、あの部屋の中でいつにも増して輝いてみえたのは、どうしても忘れられない。
「何体調なんか崩してんだよ、次の出動までにはちゃんと治せよって、みんな笑ってた」
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