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「それを読んで、僕は1人でも戦っていくことを決めた。訓練を再開した。いつもNo.7のみんなとやってたことを、独りで」
それでも、現実は、感情を裏切った。
「だけど、だんだん違和感が出てきたんだ。アラインに、僕のアニーロに、指示が出せなくなっていった」
この事実を言えば、シキくんならどういうことか分かってしまうはずだ。
僕が、どうして、今もまだ生きているのか。
「それって、能力が……」
やっぱり、彼は聡い。
「そう。僕は、アーミーチャイルドとしての能力を、もう失くしてたんだ。本当なら出動の後に受ける健診を受けられなかったせいで、気づくのが遅れた。僕の能力はあっという間に低下していって、遅れてた健診を受けられた頃には、もう全く残ってなかったよ」
医務室で告げられたその結果は、ひどく現実離れして聞こえた。
どうして、僕はまだ生きているんだろう。
みんなとの約束を、果たせないんだろう。
僕を残して死んでしまった仲間のために、死を迎えるその瞬間まで戦う。
そんな、アーミーチャイルドにとって当たり前のことが、どうして僕にはできない。
何故僕には、何もできないんだ。
答えのない問いだけが、僕の頭を満たしていた。
「さすがに施設側も、もう能力を失ったことが判明したアーミーチャイルドを、戦地に送ることはできなかった。でも、アーミーチャイルドの情報を外の世界で口外するかもしれない僕を、社会に戻すこともできない」
異例すぎた僕の存在は、明らかにもてあまされていた。施設の人達が僕への対応に戸惑っているのは、多すぎた変化のせいで過敏になりすぎた僕の神経に、痛いほど伝わった。
僕はここにいてもいいのか。
その答えなんて、今も知らない。
毎日主を失った仲間達の部屋に囲まれた場所で、時間が過ぎるのをひたすらに待った。
一日寝て過ごすことができればよかったが、物心つく前からついてしまった習慣のせいで、毎日同じ時間に目は覚めてしまい、もう眠ることもできなかった。
「結局僕は、この施設の中で、施設の人間として働くことに決められた。不思議な気分だったよ。今まで自分と同じだと思ってた人達と、まったく違う立場に立つのは。毎日、慣れないことしかなかった。同じどころか、近い立場の人もいない。話し相手すらいない。みんなが、僕の事情に触れないようにしてることが、たまらなかった」
そして、僕は初めて経験した。
「その頃、No.11がこの施設にきたんだよ」
目の前の彼を、静かに見つめる。
「シキくん達は、僕が初めて最初から知ってるアーミーチャイルドなんだ」
幼かった彼等の姿は、眩しかった。
「僕にとって、No.11は特別なんだよ。だから、この話をした。そして、お願いだ」
ひどく歪み、そして曖昧すぎる立場に置かれた僕を、No.11は初めて何も通さず見てくれた。その視線に、僕は勝手に、助けられた。
この自分勝手な話が僕のエゴイズムにすぎないのは分かっている。
それでも、僕はNo.11がこれ以上壊れていくのを見たくない。
だから目の前にいる彼に伝えたい。
「シキくん、No.11のみんなと、戦い続けてほしいんだ。リンくんは、君のせいだなんて、誰かのせいだなんて、思ってない。きっと、リンくんは願ってる。みんなが、戦い続けることを」
声が震えていることには、とうの昔に気づいている。
それでも、僕は今この言葉を伝えたい。
「僕が勝手なことを言っているのは分かってる。でも、No.11はまだ戦えるんだ。仲間も、能力も、まだ残されてる。だから、お願いだ」
僕は、手の甲で、涙を強く拭う。
「仲間のために、No.11のために、戦ってくれ」
僕がどんなに残酷なことを言っているのか、そんなことは分かっている。
それでも、伝えたい言葉だ。
あの日の僕が、伝えるべきだと言っている。
戦うことをやめないことが、仲間の一番の願いだと。
僕は、口を固く結ぶ。
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