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「……えっ。」
まさか、弓道部の人だったなんて…。それを知ってたら来なかったのに……。そう思っていると、翔海が興奮気味に彼に近づいた。
「うわぁ!主将の七瀬先輩ですよね!?かっこいいです!!」
主将!?この人が!?驚きを隠せないでいると、翔海は俺に声をかける。
「何驚いてんの、夕生?七瀬先輩は弓道部の主将で、大会で何個も賞をとってる凄い人だぞ?それに、昨日の部活動紹介でも話してただろ。まさか、聞いてないな?」
図星だった。昨日も話していたのか…。
「あー…ちょっと、ぼーっとしてたわ。」
翔海と苦笑いしていると、先輩が口を開く。
「君は俺のこと知らないみたいだから、自己紹介するね。弓道部主将、3年E組の七瀬海澄(ななせ かいと)です。今日は是非、弓道部の見学見ていってね。」
ニコッと笑う彼は、とても爽やかだった。女子部員や女子の見学者は、七瀬さんの笑顔に釘付けだった。イケメンって…彼のことを言うんだろうな。
「あ…1年A組の一ノ瀬夕生です。」
「同じく、1年A組の卯月翔海です!」
俺も自己紹介をすると、翔海も便乗して自己紹介をした。七瀬さんは、俺達をじっと見る。
「一ノ瀬君と卯月君…ね。うん、覚えたよ。せっかく来てくれたんだから、もし良かったら弓道やってみない?」
「やってみたいです!ほら、夕生もやってみようよ!」
「あ…うん。」
七瀬さんの勧誘に、翔海は目をキラキラさせて無理やり俺の腕を引っ張る。とりあえず、俺の正体には気づいていなさそう。ホッと胸をなでおろし、そのまま俺らは弓道を体験してから帰路についた。
「はぁ…まさか昨日会った人が、弓道部の主将とは……。油断したな…。」
独り言を呟きながら、俺は建物の上を軽々と飛び越えていた。今日も今日とて街の見回りに出かけていた。
「それにしても…最近は学生さんも帰るの遅いな~。俺らが見回りしないと、すぐに殺人事件って騒がれるから……。ん…?」
見回り途中、見慣れた人物を見かけた。
「あれは…な…七瀬さん……?」
学校から七瀬さんが出てきた。携帯を見ると時計は19時半を指していた。
「弓道部終わるの遅くね!?」
こんな時間に終わったら、今と同じ時間に見回り出来ない。やっぱり、運動部には入らない方がいいのかもしれないな。そう思いながら、七瀬さんを見ていると怪しい男が七瀬さんに近づいていった。
「くそっ…気づかなかった。早く行かねぇとっ!」
俺は急いで建物から飛び降り、怪しい男の上にのしかかった。
「ぐぇっ!!」
怪しい男は、吸血鬼だった。そして、昨日と同様に注射器を奴に刺した。数分もしないうちに、奴は動かなくなった。駆除も終え、その場から離れようとした時。
「待って。」
後ろから声をかけられ、俺は振り向く。七瀬さんが真剣な顔をして、口を開く。彼の口から衝撃の言葉が出てきた。
「君…一ノ瀬夕生君……だよね?」
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