出会い

6/9
前へ
/41ページ
次へ
「……えっ。」 まさか、弓道部の人だったなんて…。それを知ってたら来なかったのに……。そう思っていると、翔海が興奮気味に彼に近づいた。 「うわぁ!主将の七瀬先輩ですよね!?かっこいいです!!」 主将!?この人が!?驚きを隠せないでいると、翔海は俺に声をかける。 「何驚いてんの、夕生?七瀬先輩は弓道部の主将で、大会で何個も賞をとってる凄い人だぞ?それに、昨日の部活動紹介でも話してただろ。まさか、聞いてないな?」 図星だった。昨日も話していたのか…。 「あー…ちょっと、ぼーっとしてたわ。」 翔海と苦笑いしていると、先輩が口を開く。 「君は俺のこと知らないみたいだから、自己紹介するね。弓道部主将、3年E組の七瀬海澄(ななせ かいと)です。今日は是非、弓道部の見学見ていってね。」 ニコッと笑う彼は、とても爽やかだった。女子部員や女子の見学者は、七瀬さんの笑顔に釘付けだった。イケメンって…彼のことを言うんだろうな。 「あ…1年A組の一ノ瀬夕生です。」 「同じく、1年A組の卯月翔海です!」 俺も自己紹介をすると、翔海も便乗して自己紹介をした。七瀬さんは、俺達をじっと見る。 「一ノ瀬君と卯月君…ね。うん、覚えたよ。せっかく来てくれたんだから、もし良かったら弓道やってみない?」 「やってみたいです!ほら、夕生もやってみようよ!」 「あ…うん。」 七瀬さんの勧誘に、翔海は目をキラキラさせて無理やり俺の腕を引っ張る。とりあえず、俺の正体には気づいていなさそう。ホッと胸をなでおろし、そのまま俺らは弓道を体験してから帰路についた。 「はぁ…まさか昨日会った人が、弓道部の主将とは……。油断したな…。」 独り言を呟きながら、俺は建物の上を軽々と飛び越えていた。今日も今日とて街の見回りに出かけていた。 「それにしても…最近は学生さんも帰るの遅いな~。俺らが見回りしないと、すぐに殺人事件って騒がれるから……。ん…?」 見回り途中、見慣れた人物を見かけた。 「あれは…な…七瀬さん……?」 学校から七瀬さんが出てきた。携帯を見ると時計は19時半を指していた。 「弓道部終わるの遅くね!?」 こんな時間に終わったら、今と同じ時間に見回り出来ない。やっぱり、運動部には入らない方がいいのかもしれないな。そう思いながら、七瀬さんを見ていると怪しい男が七瀬さんに近づいていった。 「くそっ…気づかなかった。早く行かねぇとっ!」 俺は急いで建物から飛び降り、怪しい男の上にのしかかった。 「ぐぇっ!!」 怪しい男は、吸血鬼だった。そして、昨日と同様に注射器を奴に刺した。数分もしないうちに、奴は動かなくなった。駆除も終え、その場から離れようとした時。 「待って。」 後ろから声をかけられ、俺は振り向く。七瀬さんが真剣な顔をして、口を開く。彼の口から衝撃の言葉が出てきた。 「君…一ノ瀬夕生君……だよね?」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加