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話を聞く前に、ちゃんとメモを用意する。三流芸能誌の記者とはいえ、酒井も一応プロだ。最低限の基本ぐらいはわきまえている。
「二階堂ミドリ。おれのばあさんのいとこだ。花立市に住んでる。この前、ばあさんの弔問に来た」
「おいおい、身内かよ。そのぐらい自分で探せ」
おれは携帯を持つ手を入れ替えた。
「身内っつったって、ばあさんのいとこだぜ? 遠すぎて調べようがないよ」
「純一。おまえ、努力する気ないだろ。世の中には電話帳という便利な道具がある。個人情報なんて気にしないような年齢層なら電話帳に載ってる可能性は高いだろう。花立市は戸建ての家と田んぼと山がほとんどの町だしな」
「もちろんそのくらいおれも調べたさ。そこまでバカじゃない。でも、『二階堂ミドリ』という名前の右側の電話番号にいくら電話をかけても、現在こちらの電話番号は使われておりません。そう繰り返すだけでさ」
「固定電話を解約したのかもしれない。携帯があればそんなの必要ないもんな」
「ああ、そうか。そこまでは考えつかなかった」
「まったく、面倒くせえなあ…。自分でどうにかしろよ。市役所に訊くとか、警察に訊くとかさ」
「おれが訊いたら怪しまれる。いろいろと事情があってさ。複雑なんだ」
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