猿の葬儀

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 おれは二人にお茶をいれてあげる。このまえミドリさんに言われた注意点をしっかりと思い出しながら。小言を言われるのは死んだばあさんだけで十分だ。  とっておきのドーナツもつけてやる。全国展開しているチェーン店のやつじゃない。地元で有名なドーナツ専門店のやつだ。 「おいしい、ドーナツもお茶も」  とびっきりの笑顔。百合香さんの表情を見ているだけでおれはうれしくなる。 「ドーナツがおいしい。今度はお茶も」  ミドリさんの一言でばあさんを思い出す。さすがはいとこだ。よく似ている。素直じゃないところも。時折見せる意地悪な言い方も。 「おほめにあずかり恐縮です」  おれは大げさに頭を下げて見せる。ミドリさんが笑った。おれはちょっとイラッときた。  一服してしまうと、ミドリさんがおれの方に顔を寄せてきた。 「二人で話せるかしら」 「もちろん」  おれはわざと大きな声で言った。激痛が走る。ミドリさんがおれの腕を噛んだのだ。もちろん、百合香さんに見えないところで。 「百合香、買い物に行ってきてちょうだい」  ミドリさんが百合香さんにお金を渡す。 「何を買ってくればいいの?」 「食べるものを適当に買ってきて。もうすぐお昼だし」 「いいですよ。おれが買ってきます。お二人はお客様なんだから」  ミドリさんが口の前に人差し指を立てる。     
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