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「確かにここの弁当はおいしいですけど、そればっかり食べちゃいけませんよ。こういうものは添加物やらなんやら身体に良くないものがいっぱい入ってるんですから」
おれと百合香さんは思わず顔を見合わせた。そして、その直後百合香さんは「ごめんなさい」と小さな声で言った。おれもすぐ横のミドリさんに聞こえないくらいの微かな声で「いえいえ、おれも慣れてます。うちのばあさんもあんな感じでしたから」と返して安心させてやった。
「聞こえてますよ」
その言葉におれたち二人はどきりとさせられる。そうっと振り向くとミドリさんが真っ赤な歯ぐきをおれたちの方に見せつけていた。小さいころ、動物園に行っていたずら半分に猿山のボス猿へ石を投げつけたことがあるけど、あのときのボス猿も今のミドリさんと同じ反応をしていたな。
そんなこんなでその場の空気は最悪になった。誰もが食べるためだけに口を開き、一言も口をきかなかった。
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