猿の葬儀

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「基本、家から出ないようにしてるから。今はやりの引きこもりってやつね」 「警察にもまだ知らせてないんですか? あなたが戻ってきたこと」 「言えるわけないじゃない。私にこの姿でのこのこ警察まで出かけて行って、すみません、戻りました。お騒がせしましたって言えって言うの?」 「なるほどね」おれは納得した。「だから失踪者扱いになってたわけだ」 「調べたのね」  ミドリさんが意地悪そうに言った。おれの額に汗がぶわっと吹き出した。 「責めませんよ。そうするのは当然だもの。私だってそうするでしょう。いきなり家に猿が来て、自分のおばあさんのいとこの名前を騙っていたらね」  おれはほっと胸をなでおろした。 「むしろ感心しましたよ。正直申し上げれば意外だった。純一さん、少し抜けてるところがあるから。案外しっかりしてるんだなあって」  おれは少しむっとしたが顔に出さないようにして話題を変えた。 「でも、百合香さんはごまかせないでしょう。どう説明してるんです? 警察に連絡しておこうよ、とか言われないんですか」 「そりゃ、言われたわよ。でもごまかした。もうちょっと誰にも知られずにゆっくりしておきたいから、って」 「よくそれでごまかせましたね」     
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