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「じゃあやっぱりわざわざ服を着てくる必要なんてなかったんじゃないですか」
「雰囲気よ、雰囲気。だって、せっかく久しぶりに初枝ちゃんに会うのに、裸じゃあんまりでしょ? まあ、変なこだわりがあったせいで、ここまで来るのは前回も今回も大変でしたけどね。車の窓から往来の人に見えないようにずっと身をちぢこませてなきゃいけなかったから。その上、百合香からはおばあちゃん何してるの、って言われるし」
「それは大変でしたね」
「また心にもないことを言う」
ミドリさんが意地悪そうに言った。
「本当ですよ」
おれは慌てた。
「まあ、そういうことにしておくわ」
そう言うとミドリさんは急に黙りこんだ。
「どうかしたんですか?」
「私ね、この身体になってからいつも申し訳なく思ってるのよ」
「百合香さんに?」
「いいえ」
「じゃあ、息子さんに?」
「いいえ」
「それなら、うちのばあさんに?」
「それも違うわ」
「もしかして、おれに?」
「なんであなたに申し訳なく思わなきゃいけないのよ!」
そりゃそうだ。
「じゃあ、誰にです?」
「この身体をくれたお猿さんによ」
ミドリさんは眉間にしわを寄せた。
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