猿の葬儀

47/61

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「そうかもしれません。でも人間なんです。手当しないと死んでしまうんです」 「そうですか。でも治療はここではできかねます。動物病院を紹介しますのでそちらに向かわれてください」 「この分からず屋!」  おれはそう吐き捨てると病院を出た。残ったやつらがどんな顔をしていたかは知らない。  他にも何軒か病院を回ったが、どこの対応も似たり寄ったりだった。  そうしている間にもミドリさんの息はどんどん細くなり、命の火は消えようとしていた。ここまで来たらやるしかないと思った。  次に行った病院もこれまでのやつらと同じことを言った。 「うちは動物病院じゃありません。他をあたってください」  その受付の女は、今どきの気取った眼鏡をかけていた。なにより今までの誰よりも冷淡な態度だった。 「そうかい。じゃあ、こっちにも考えがある。警察に行ってやるからな。この病院は患者を拒否したって」 「そんなこと警察が信用するはずないじゃないですか」 「じゃあ、マスコミだ。マスコミにおたくの病院が患者を拒否したってリークしてやるぞ。おれには報道関係者の知り合いがいるんだ」 「あなたいい加減にしてください」 「いい加減なもんか。おれは真剣だ。とにかく院長に会わせろ」     
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加