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おれの口からつばが大量に飛んだ。
これはただごとじゃないぞ、と目の色を変えた住職がおれを突き飛ばして風呂敷の中身を見ようとする。突き飛ばされたおれは、いよいよ頭に血が上ってしまって、住職の肩のあたりを思いきり蹴飛ばしてしまう。
「やりやがったな、この野郎」
住職はチンピラみたいなセリフを吐くと、おれの頬を握りこぶしで殴り飛ばした。おれの頭が畳に打ちつけられる。脳が揺れる。意識がもうろうとする。一、二秒の間があって、おれはようやく意識を取り戻した。だが、もうその時にはすっかり住職が風呂敷包みを開けてしまった後だった。
「クソっ」
おれは自分の拳を畳にたたきつけた。そんなおれとは裏腹に住職は呆然と風呂敷包みの中身を見つめていた。
「なんだ……」住職はひとり言のように言った。「なんだ、猿やんか」
「そうだよ」
おれはぶっきらぼうに言った。
「なーんや、心配して損したー」
住職は畳の上に背中からばたんと倒れこんだ。
「そうなら、そうと、ちゃんと言わんや。つい、殴ってしまったやんか」
「説明しようとはしたんだよ」おれは口をとがらせながら言った。「でもその前に住職が勝手に中身を見ようとするから」
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