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「悪い、悪い」住職ははにかみながら、毛の無い頭をかいた。「で、この猿は何? なんでお前が猿の死骸なんか持ってきてんの?」
おれは何と答えようか少し迷ったが、覚悟を決めて言った。
「実はこの猿、おれのばあさんのいとこなんだ」
「はあっ?」
住職は思いっきり呆れていた。
まあ、そういう反応になるよね。おれが住職の立場だったとしても同じ反応をしたと思う。
「冗談言うなら、もうちょっと信憑性のある冗談にしろよ」
「おれだってもうちょっと気の利いたことが言えたらいいなと思うさ。でも、事実なんだからしょうがない」
おれは苦笑した。そして、ことの経緯を細かく説明してやった。おれは話し終わると、なんだか気まずくなって言った。
「……なんてこと言っても信じやしないよね。こんな非科学的な話」
「バーカ」住職の声とともに、甘く煙たいにおいが漂ってきた。どうやら、おれが知らない間に、タバコをすっていたらしい。「科学だ、非科学だって言いだしたら、おれらの商売あがったりやんか」
確かにその通りだ。
「で、おまえはどうしたいと?」
住職がタバコの火を灰皿できれいに消した。
「この猿を、いや、ミドリさんを人間として弔ってやりたいんだ」
「ははーん。それで」住職がにやりと笑う。「おれにあんな心づけを持ってきたわけか」
おれはうつむきながらうなずく。
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