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「葬式……、してくれないかな? そんな大々的なやつじゃなくていいから」
「分かった。どうにかやってみる」住職は次のタバコに火をつけた。「こんなうまそうな酒までもらっちまったしな」
住職はおれが持ってきた一升瓶を笑いながら片手で振ってみせた。
「ありがとう」
「そうしおらしくすんなって。おまえらしくもない。この借りはどこかで返してもらえばよかけん」
「住職の借りか……、高くつきそうだな」
おれがにやりとした。
「ああ、死ぬまでおまえにたかってやるから覚悟しとけ」
おれたちは声を立てて笑った。
「それはそうと、おまえ、今礼服用意できる?」
住職が訊いた。
「できるけど、どうして?」
「死体が腐っちまう前に、なるだけ早く済ましといたほうがよかっちゃないかと思ってさ」
「そりゃそうだけど、今から葬式すんの?」
「嫌か? 今すぐの方が、都合がいい。今日は誰も来ないから。もし別の日にして、猿の葬式やってるとこなんか檀家に見られたら、厄介なことになる」
おれは少し考えこんでから、
「分かった」
と返事をした。
おれが着替え終わって寺に戻ると、住職もきっちりとした僧衣を身に着けていた。普段はおちゃらけているけれど、まともな格好をすれば彼も立派な坊さんに見える。
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